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黒ネコ琉璃の噺とゲームの小部屋

琉璃が思いつくままに小説を書いていく部屋です。テイストはラノベ、少女小説といったところでしょうか。眠れない夜のお供にでも。ときどき(?)ゲームと飼い猫の話もつぶやくと思います。

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女神の巫女姫 no.16

 強く輝く青玉と翠玉の視線が、穏やかな風の吹く坂道の上で交錯する。さやさやとなる葉擦れの音が耳に響くほどの静寂が、あたりを満たしている。
 先に視線を逸らしたのは、少女のほうだった。

「別に、そんなに変なことだとは思わないけどなぁ」

 体を反転させ、足をけり出すようにゆっくりと歩き出す。そんな少女についていくように、青年もそのままの距離を保って歩く。困ったような声で、何かを話し出そうとする少女の心を慮って。

「だって、わたしを必要としてくれるのは、セシルしかいないんだもの」
「・・・『巫女姫』のあなたはそれだけで、この世界では必要とされる存在なのでは?」

 独り言に似た、少女の呟き。自嘲を含む声音は、普段ののほほんとした少女には不似合いなもの。

「確かに、『巫女姫』のわたしを必要としてくれる人は多いわ。女神の恩恵である、精霊たちの加護を一身に受けてるんだもの、当然よね。・・・でも」

 言葉を切って、軽く息をつく。少し上った丘の上から見える遠くの景色を眺める横顔には、薄く浮かべられた笑み。けれど、口元とは裏腹に、瞳の中にはどこか寂しげな光。

「「わたし」を必要としてくれるのは、セシルだけだもの」
「・・・・・・・・・」

 降り注ぐ光は温かく、吹き抜ける風はさわさわと心地よく肌をなでる。のどかな光景にふさわしい、春を体現したような光に満ちた少女の中には、その外見とは似つかわしくないものが潜んでいる。
 そのアンバランスな危うさは、見る者の視線を引き付ける何かがあった。儚げにさえ見えるそのたたずまいは、触れれば壊れてしまいそうで。
 カイが魅入られたように、見つめることしかできない中で、少女はふっと、その纏う空気を変える。まるで、今までのものは白昼夢であったかのように、真昼の光の中に消えていた。

「まぁ、どんな形でも、必要とされているっていうだけで幸せなのかもしれないけどね」

 ふわりと微笑んで青年を振り向く少女の顔は、その雰囲気に似つかわしい、無邪気なもの。何一つ思い悩むことなどないというような、明るい表情。
 けれど、一瞬で消された儚さのほうが、きっと少女の本当の姿なのだろう。
 常に浮かべられている、子供らしさを残すふわふわとした表情は、少女が自分を守るための武装なのだ。『巫女姫』という重責を負い、早く大人にならなければならなかった少女の。

「さ、先を急ぎましょ。このままだと、セシルたちに置いていかれちゃうわ」
「・・・そうですね。急ぎましょう」

 いつか少女が、装うことのない表情をすることができることを、心の中で祈りながら、カイは歩く速度を上げてリシルの後を追った。



   to be continued
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女神の巫女姫 no.15

 一方、リシルとカイは、ジークの予想通り二人で行動をしていた。
 「魔物」の襲撃を退けた後、リシルが真っ先にセシルの居場所を探索したところ、今リシルたちがいる場所から少し離れた場所にいることが分かった。そのままセシルのもとへ行こうとするリシルを、穏やかな微笑みを崩さないカイがなだめる。

「もうちょっと様子をみましょう。たぶん、セシルは兄さんと一緒にいると思いますので、何らかの動きがあるはずです」

 カイも、あの戦闘中の仲間の動きを把握しており、セシルとジークが近くにいたことに気づいていた。その状況ならば、あの、人を守ることに長けた兄が少女のそばを離れるとは思えない。黒髪の少女は、自分を守ることのない、どこか危なげな戦い方をしていたから。
 その言葉通り、少し経つとセシルの反応は丘の上に向かって進みはじめた。シルフィードのいる、丘の頂上を目指す形になる。
 リシルたち二人は森の中だが、始めの一本道からそれほど離れておらず、もとの道に戻ることが出来る。そこから、シルフィードのいる丘の上までの最短経路をたどると、自然とセシルたちと合流できるため、このまま丘の上を目指すことにする。
 二人は、森を抜け丘の坂道を登りながら、周囲への警戒はしつつも世間話に興じていた。

「お二人は、仲がいいんですね」

 そんな中で、ふとカイが話題を転換した。その転換に不自然なところはどこにもなく、何の意図もないように見える。

「あら、カイたちは兄弟仲よくないの?」

 カイの問いに、リシルは翠の大きな瞳をさらに瞠ってみせ、その言葉を否定することなくさらりと話題をすり替える。
 小首を傾げた拍子に、穏やかな日差しをきらきらと弾く金の髪が、ふわりと小さな顔にかかる。邪気のない、のほほんとした笑顔は見る者の警戒心を崩す効果がある。
 そんなリシルの反応にも、特に表情を崩すことなくカイは答える。

「別に悪いわけではありませんよ。ただ、リシルたちの仲のよさが、特に際立って見えただけです」
「あら、そう?別に普通だと思うわ」

 青年の、春の日差しのような笑顔で、何を含んでいるかのような言葉。
 対するは、少女の、含みなど何も気づきませんと言わんばかりの、無邪気を装った笑顔。
 狐と狸の化かし合いじみた微笑みの応酬は、二人が分かれ道にたどり着くまで続いた。

「別に、他意はないんですよ。ただ、噂通りだなと思っただけです」

 そんな無益な戦いに終止符を打ったのは、道の分岐で立ち止まったカイの困ったような笑顔とともに吐き出された台詞だった。

「現代の『巫女姫』は、格別絆が強い、と伺っていたものですから、本当にその通りだと。ただ、不思議に思って」

 襟足にぎりぎりかかるくらいまで伸ばされた銀髪に隠された首の後ろをかきながら、そんなことを言う。
 立ち止まった青年に合わせて、少女のほうも立ち止まり、数歩後ろにいる青年に振り返る。彼の兄ほどではないが、長身の部類に入る青年の顔を見るには、小柄な少女は仰ぎ見なければならなかった。

「同じ地位にいる近しい者が二人いて、片方が明らかに優遇されている状態で、なぜそんなにも仲がいいのか。いや、仲がいい、なんて生易しい表現では足りない」

 カイはそこで言葉切る。自分の感じるものを表すのに、適切な表現を探して視線を軽く伏せる。
 何か思うところがあるのか、口元に残された笑みはどこか苦味を帯びている。

「まるで、お互いに依存しあっているような。・・・そう、二人だけで、世界が完結している、と表現するのがふさわしい」

 上げられた視線は、その中にある感情を読み取ろうと、まっすぐに少女の翠色の瞳をとらえている。



   to be continued
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女神の巫女姫 no.14

 ジークは手当てに礼を言ったにもかかわらず、その傷の原因となった自分は感謝どころか、謝罪もしていない。恩知らずもいいところ、な自分の行動に、一気に羞恥心がわく。

「あ、あの・・・その、ごめん」
「・・・・・・?」

 セシルは、とにかく早く何か言わなければという焦りから、謝罪の言葉に詰まるわ、何に対する謝罪なのかわからない発言になる。男のほうからすれば何の脈絡もない謝罪に、どう反応すればよいかわからないらしく、意味が分からない、と目顔で語っている。

「えっと、その傷、あたしをかばったから。そんな必要なかったのに。ごめん・・・それから、ありがと」

 しどろもろどではあったが、何とか言葉を紡ぐ。
 そんな少女の様子に、男は少しだけ視線を和ませたが、すぐに引き締め聞かなければならなかったことを聞く。

「あのとき、なぜ避けなかった?」

 そう、少女はあのとき、避けられなかったのではなく、避けなかったのだ。あのままジークが間に割って入らなければ、「魔物」の吐いた炎は確実にセシルに届き、無防備な背中を焼いたはず。傷を負うことが確実な攻撃を避けないなど、自殺行為でしかない。

「・・・あれは、避けなくても大丈夫だったの」

 言いにくそうに、視線を合わせずに申し開きをする少女に、男は視線を鋭くする。
 あんな心臓に悪い自殺行為を、そう度々されてはかなわない。きちんと理由を説明するまで、引き下がるつもりはなかった。

「あたしね、他人からのマナの干渉を受けないんだ」

 その説明だけでは不十分。視線でそう訴える。

「巫女姫だからかな?昔から、他人の精霊術とか、「魔物」のつくる火とかかまいたちとか、そういったものが効かないんだ。あたしの体に触れた瞬間に、消えてなくなっちゃうの。どんな原理でそうなってるのかは、神殿にも、リシルにもわかってないんだけど」

 説明を終えたセシルに、ジークが確認をする。

「つまり、あの炎はお前に触れることはなかったと?」
「・・・ごめん。あんた達にはちゃんと説明しとくべきだった。説明してたらそんな怪我、しなくて済んだのに・・・。ほんとにごめん」

 心からの謝罪とともに、深く頭を下げる。
 生まれた時から一緒にいる少女たちにとって、セシルの特異体質は当たり前であったし、このことを知っている神殿の人間意外と旅をすることもなかったため、説明を要するものであるという認識がなかった。しかし、他人を負傷させたのでは、そんな言い訳はできない。
 頭を下げた少女を前に、男は深く溜息をつく。別に、傷を負ったことに謝罪を要求したつもりはなかったのだが。

「別に、大した傷でもない。・・・次からは気を付けろ」

 ぽんぽん、と少女の頭に手をのせてからなんでもないように話し出す。

「少し時間を食ったが、合流のあてはあるのか?」

 男の行動に、触れられた頭を押さえてしばし呆然としていた少女は、我に返る。

「・・・あ、えっと、これ」

 あたふたと、革紐で首から下げていた石を見せる。大きさは親指の爪ほどで、金髪の少女の瞳を思わせる美しい翠の輝きを持った珠だった。

「あたしは精霊術を使えないから、あたしからリシルの居場所を探ることはできないんだけど、リシルはこれの場所を探知することが出来るんだ。」
「なるほど。向こうからの接触を待つしかないということか」

 ジークはそう言って思案する。その間に、セシルは落ち着きを取り戻し、どうすべきか考える。 

「ならば、俺たちはこのまま精霊の居場所へ向かおう」

 しばし沈黙した後、ジークが口を開いた。
 もともとの目的地は精霊シルフィードのいる場所なのだから、自分たちがこのまま向かえば、その後を追ってくるリシルもセシルたちの行動や行き先の予想がつくだろうし、先に行っていた場合は、途中で待っていることもできる。リシルとカイが一緒にいなかったとしても、カイならば今回のようにはぐれた場合、もとの目的地へと向かうと考えられるから、結局はシルフィードのところで落ち合える。

「これが一番、効率がいい」

 そう締めくくって、セシルに目顔で同意を求めてきた。その視線は押しつけがましくはなく、よりよい案があるならば受容する意思が見て取れた。
 その余裕にあふれたジークの態度に、釈然としないものを感じながらも、セシルはうなずく。自分ばかりが乱されて、面白くない。が、そんな感情に振り回されて異論を唱えるほど子供ではない。そんなところ。

「よし、なら行くぞ」

 セシルの心の内を知る由もなく、ジークはシルフィードの坐す、丘の上を目指して歩き出した。


   to be continued

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女神の巫女姫 no.13

「・・・っごめん」
「大した傷ではない」

 セシルの謝罪を受け取り、向かいあったジークは左手でセシルの腕をとる。やっと止まった少女をここで逃がすわけにはいなかい。
 反射的に腕を振り払おうとして、またジークの左手であることに気づき動きを止める。

「とりあえず落ち着け。俺たちがはぐれる直前まで、カイがリシルの近くにいた。あちらも二人でいる可能性が高い。身内の欲目を差し引いても、あいつの腕は悪くない。そうそう簡単にやられはしないだろう」

 セシルが止まった隙に、ジークは一息にしゃべった。その一息の間に、反対の腕も拘束して完全に自分に向き合うように、少女の体の向きを変える。森はもう目前で、これ以上進ませるわけにはいかない。
 ジークに拘束されたことで、セシルはさらに冷静さを取り戻す。一つ大きく息をつき、リシルの身を案じる焦燥を吐き出して、取り乱した己を反省する。

「・・・・・・わかったから、離して」

 信用ならないとでもいうようにじっと見つめるジークに、正面から眼を合わせて言葉を重ねる。もう、大丈夫だと態度で示すために。
 セシルの視線を受け、ジークは慎重に手を離した。男の視線が警戒の色を含んでいないことから、セシルが落ち着きを取り戻したことを察してくれたようだ。

「手、見せなよ」

 ジークから視線を外して、ぼそっとセシルが呟く。
 唐突に言われた言葉の意味が分からず、ジークは数度瞬きを繰り返すが、そんなジークに焦れたのか、本人の了承も得ずにセシルがジークの左手を取った。

「・・・軽い火傷。これなら、後も残らないね。これは応急処置だから、後でリシルに『癒しの唄』でもしてもらって」

 男のグローブを外して傷を丹念に診た後、自分の道具入れから火傷用の軟膏を取りだし男の手のひらに薄くのばす。さらに包帯を取り出して、慣れた手つきで巻き付ける。
 一通りの治療が終わり、自分のもとに返ってきた左手を眺め、ジークは少し驚いた顔をする。

「・・・なに?」

 そんな男の反応に、少女はとがった声を出す。本格的に気分を害しているのではないが、視線も少しだけ険しい。

「いや、上手いなと。礼を言う」
「・・・・っ!」

 ジークの心なしか口の端を持ち上げた笑みのような表情に、セシルの鼓動が一瞬跳ねた。

「別に・・・それくらい普通だよ」

 それを悟られまいと顔をそむけるが、視線だけでひそかに男を観察する。先ほどの表情はすでに消え、周囲の地形や環境を把握するために視線を遠くに飛ばしている。
 弟と同じ銀の髪に青い瞳ではあるが、その趣はだいぶ異なっている。弟が春の柔ら重ならば、この男は凍てついた冬。少女の中では背の高いほうのセシルと比べても頭一つ分背が高く、筋骨隆々ではないが広い肩幅の鍛え抜かれた体躯は、力強さと俊敏さを秘めているが、粗野な荒々しさはない。他人を寄せ付けない雰囲気は、まるで野生の狼を思わせる。
 年頃の少女ならば、自分をかばってくれるいい男の微笑みを見てときめきを感じるのも当たり前。しかし、あまり普通とは言えない道を歩んできているだけに、人生経験は他の少女よりも豊富だが、心の機敏に関しては少々疎いセシルは、自分がこのとき何を感じたのか理解できなかった。
 そんなことよりも。

(あれ?あの傷って、そもそも・・・)

 そこまで考え、別の意味で鼓動が跳ねた。


   to be continued

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女神の巫女姫 no.12

 最後の「魔物」を仕留め、一息ついて周りを見渡してみれば、襲撃を受けた場所からだいぶ移動しており、リシルとカイの姿は見えなかった。

「完全にはぐれたな」

 剣を鞘に納めながらあたりを見回し、ジークがこぼす。いつの間にか森を抜け、丘の裾野まで来ていたが、一本道からはかなり離れているらしく、元来た場所はかなり遠そうだった。

「・・・っリシル!」
「待て!」

 焦燥もあらわに、そのまま森の中へ引き返そうとするセシルを、ジークが静止するも、聞こえていないかのように彼女は歩き出す。
 そんなセシルを見て、ジークは軽く溜息をつき後を追う。
 普通の少女であるセシルと大柄な男のジークでは歩幅が違うため、追いつくのは簡単だったが、少女のほうは止まる気配を見せず、猛然と歩いている。

「どこに行くつもりだ」
「リシルのところに決まっている!」

 少女の斜め後ろで歩調を合わせた男は、冷静に問いかける。しかし、返って来たのは感情に任せた一言。
 再び溜息をつき、またしても落ち着いた声音で聞く。けれど、返答は変わらず。

「それはわかっている。そのリシルの居場所はどこだ、と聞いている」
「わかっていたら、こんなに焦ってはいない!!」

 本来ならば高い警戒心で周囲に気を配ることを怠らない少女が、今は片割れへの気がかりと焦燥でその能力が発揮し切れていない。こんな状態では、見つかるものも見つからないことは、男の眼には明らかだった。それどころか、先ほどのように「魔物」の襲撃に、冷静に対処できるかも怪しい。
 こんな危なっかしい少女を、正気を失った「魔物」の棲む森の中に放置する気なれるほど、この男は人でなしでも薄情でもなかった。
 しかし、何とか少女に冷静さを取り戻させなければ、少女もろともこの危険な森をさまよわなければならない。
 努めて冷静に、少女の感情を荒立てないように言葉を選びながら、少女を引き止めるべく声をかけ続ける。

「わかったから落ち着け」
「うるさい!あれだけの「魔物」に一人で囲まれて、リシルに何かあったらどうする!!」
「リシルの近くにはカイもいた。一人ではない」
「そんなもの、何の保証にもならないだろう!!」

 けれど、男の努力も空しく、少女は止まる気配を見せずにますます感情を高ぶらせる。
 元来それほど口数の多くはない男が、これ以上言葉で少女を止めることは不可能だった。そして、それを当の男も理解していた。ここは実力行使に出るしかない。
 少女と自分の腕力差を考えるとあまり力は入れるつもりはないが、慎重に腕を取って引き止めようとする。
 しかし、触れる直前でセシルが右腕で振り払った。

「っさわるな!!」
「っ・・・!!」

 それほど強く振り払ったわけではないのに、ジークが一瞬息を詰める。
 不自然なその動きを不審に思ったセシルは、自分が払ったのがジークの左手であることに気づく。それは、自分をかばった時に負傷したところ。
 それに気づいた途端、頭に上っていた血が一気に下がった。



   to be continued
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