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黒ネコ琉璃の噺とゲームの小部屋

琉璃が思いつくままに小説を書いていく部屋です。テイストはラノベ、少女小説といったところでしょうか。眠れない夜のお供にでも。ときどき(?)ゲームと飼い猫の話もつぶやくと思います。

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女神の巫女姫 no.5

 荷物を置き、ある程度整頓してから階段を降りると、食卓からはいい匂いが立ち上る調理がすでに用意されていた。
 内容は、暖かなシチューに自家製であろうパン。

「「いただきます」」

 そろって席に着き、食事の挨拶を済ませると、治癒師夫妻ともども食事を始める。

「こんなものしか出せなくて、ごめんなさいねぇ」

 セシルたちが、食事に対して賛辞を送っていると、奥さんが少しすまなそうにそういった。
 確かに、奥さんのシチューは味は申し分ないが、具材が少ない。ジャガイモ、ニンジン等はだいぶ小ぶりで、ルーのほうが圧倒的に多い。肉に至っては、旨みをルーに出すために申し訳程度入っているようなものだった。
 かといって、人様の家にいきなり押しかけておいて(もちろん謝礼は払うけれども)、出てきた食事に文句をつけるほど、二人は非常識ではない。

「そんな、十分です。それに、あたしたちは突然お邪魔したんですから、そんなことお気になさらないでください」

 セシルがとりなすように言うと、頬に手を当てて困り顔の奥さんは、さらに困ったように溜息をつく。

「最近、作物の育ちが悪いのよ。この村は、自給自足に近いから、村全体で食料がいつもに比べて少ないの。本当に困ったわぁ」
「それは困りましたね。何か原因があるんですか?」

そんなセシルの質問に、今度は治癒師のほうがリシルに言葉をかけてきた。

「お嬢さんは、治癒師か、法術師ですよね。お気づきかと思いますが、最近、マナ全体が減少していっています。ここはもともと耕作には不向きな土地ですが、マナの集まりやすさから、村ひとつ養える程度の収穫が得られます。雨の量や天気は例年と特に変わりありませんから、不作の原因は、たぶんこの現象によるものでしょう。」

 リシルが無言でうなずくのを見てから、治癒師が溜息をつきながら続ける。

「しかし、マナ減少の原因はわかりません。これが、一過性のものなのか、減少し続けるものなのか・・・」

 今は多少育ちが悪い程度ではあるが、このまま不作が続けは、小さな村にとっては死活問題だ。そのため、治癒師の顔色はあまりよくない。

「神殿に問い合わせてみるにしても、ここからでは遠いですし。あなた方は何かご存じありませんか?」

 神殿とは、創世神アデルライトを主神とし、世界を構成する彼女の力であるマナの化身たる精霊達を信仰する、この世界の9割以上の人々を信者とする宗教の総本山である。世界に異変のあるようなマナの変動に関して、神殿が気づいていないはずもないが、それについて一介の治癒師に知らせるかは別問題である。

「さぁ・・・わたしには。ごめんなさい」

 リシルがすまなそうに謝ると、治癒師ももともと期待していなかったのか、苦笑して気にするなといった。

「暗い話ばかりしてごめんなさいね。今日はもう遅いし、うちでゆっくりと休んでいって」

 気づけば食事ももう終わっている。奥さんが気を取り直すように、明るく言うので、セシルたちも笑顔で席を立つ。



「マナの減少が、普通の人たちの生活にまで影響を出し始めたな」

 食事の後、セシルたちはあてがわれた部屋に戻って明日の準備をしていた。
 あの後、食器の片づけを申し出たが奥さんには断られてしまった。お客様にそんなことはさせられない、というお言葉と朗らかな笑みによって。

「そうね。マナに頼って生活している人には、不安を感じるには十分な減少度合いだと覆うわ」

 リシルの言葉に、武器である扇の手入れをしていたセシルが驚いて手を止めた。

「そんなに減ってるのか?」
「セシルは、マナに全く干渉されずにいるから、いつもと変わらないと思うけど、私からすると、天変地異の前触れだと思える程度の減り具合ね。一介の治癒師程度か感知できるんだもの、早急に原因を突き止めなきゃ」

 一介の治癒師程度、などと、のほほんとした外見からは想像できない辛辣な言葉を吐きながら、リシルは自分の道具である魔術杖の宝珠を磨く。彼女は、見た目のうららかさとは裏腹に、したたかな内面をしている。一説には、彼女は“作っている”という噂もある。

「なら、さっさとシルフィードに会いに行かないとな」
「そうね、シルフィだけで原因がわかるとは限らないし、他の精霊にも会いに行かなきゃ」

 手入れの終わった道具をしまい、二人は根支度を整える。

「大したことが、起きてないといいんだけど」

 寝台に入ったセシルが、そんなことを呟く。

「さすがに、それはムリなんじゃないかしら。マナの減少なんて、伝説の中でしか起きてないような出来事だし」

 布団をかぶったリシルが、そんな身も蓋もないことを言う。確かに、今の減少は、古文書に残る、伝説級の出来事ではあるけれど。

「大丈夫よ、わたしには、セシルがいるもの」

 むにゃむにゃと、はたからは意味不明なことを言う。

「そうだな、あたしには、リシルがいるし」

 しかし、返したセシルも、同じようなことをいった。

「何も、怖いことなんてないわ」
「そうだな」

 そういって、二人は眠りについた。


   to be continued
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