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黒ネコ琉璃の噺とゲームの小部屋

琉璃が思いつくままに小説を書いていく部屋です。テイストはラノベ、少女小説といったところでしょうか。眠れない夜のお供にでも。ときどき(?)ゲームと飼い猫の話もつぶやくと思います。

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女神の巫女姫 no.10

 夜が明けてから、一行は南を向いて歩き、風切の丘と呼ばれる場所の入り口にたどり着いた。

「女神の力を使う方法は、神殿にはない。神話にも巫女姫がどんな方法で世界を救ったのかは記されていないんだ」
「女神の分身である精霊たちが知ってるはずだから、聞きに行くところだったのよ。精霊と直接会話ができるのは巫女姫だけだから」
「そゆこと。風の精霊のシルフィードは、ここから南に行った風切の丘にいるから」

 道中行われたセシルとリシルの説明。
 精霊のいる場所は一般の人々にも知られているが、そこは神殿の管轄下に置かれ、出入りするのは簡単ではない。神殿に入場申請を出して、いくつもの審査と許可を得て初めてはいれる場所だ。
 風切の丘は、その周囲を鬱蒼とした森に囲われている。しかもその森は、地元の者には「迷いの森」と呼ばれるほどで、下手にに足を踏み入れれば生きて戻れないとまで言われていた。現に、年に何人か迷い込んだ者が、獣の餌食になった形で見つかったり、行方不明のままだったりしている。
 けれど、まるで侵入者を防ぐようなその形は、実際に入場制限を課している側からすればとてつもなく便利で、唯一人が通れるように作られた道の入り口には衛兵が立ち、常に目を光らせている。
 当然、カイもジークも入場許可などとっておらず、入れるはずもないのだが。

「巫女姫の護衛を通さないとでもいうのかしら」

 リシルのこの言葉は、あっさり衛兵たちを退けた。
この世界において『巫女姫』に政治的、実質的権力はないが、こと精霊や女神に関しては最優先でその言葉が通される。
 『巫女姫』の精霊への拝謁を邪魔するなど、一般兵にできることではないらしい。その巫女姫のお供も、巫女姫が必要だという以上、止めることはできなかった。
新緑の萌える季節だけに、森はその生命力をいかんなく発揮し、あちこちに枝を伸ばす。ちらちらと光る木漏れ日や、そこここに感じる生命の気配が、「迷いの森」などというおどろどろしい名前とはかけ離れた様相を呈していた。
 しかし、そんなすがすがしいはずの森の中にいながらも、リシルの顔色は優れなかった。

「この森のマナ、何か変?」

 もちろん、それに気づかないセシルではないから、リシルに声をかける。
 いつもの二人旅ではないから、気疲れするのは仕方ないにしても、そんな理由でリシルの表情が浮かないのではないとセシルにはわかる。今のリシルの表情は、周囲の異変をいぶかしんでいるものに違いなく、そして、環境の変化により敏感なセシルが気づかないということは、マナに関することくらいしかない。

「うん・・・、この森、なんかマナの循環が変なのよ。世界からマナが減ってるから、濃度が薄いのは仕方がないにしても、なんというか・・・淀んでる、のかしら?」

 自身のなさそうなリシルに、セシルも顔を顰める。セシルにはマナの流れなどは見えないし、感じられない。けれど、女神の巫女姫のリシルが感じたことのないマナの変調など、天変地異の前触れ以外のなんでもない。
 注意深くあたりの気配をうかがうも、それほど何かが起きているようには感じられない。動物たちも、いつもと変わるというほどのことではない。ただ少し、静かなだけで。

「森が怯えているのは、そのせいか」

 不意に、ジークがそんなことを呟く。喋らないというほどではないが、言葉少なな彼が呟く独り言。そこに意味があると考えるのは当然の心理で。

「どういうことですか?」

 さすがは弟だけに、そのあたりを理解しているカイが聞き返す。森が怯えるとは、どういうことか、「何に」怯えているというのか。

「森も生き物も、息を潜めているんだが・・・なるほど、そういうことか」

 周囲の気配を探るように視線をさまよわせていたジークが、納得したようにうなずく。と同時に、それとはわからないほどに身構える。
 セシルも、森とそこに生きる者たちがいつもよりも静まり返っていることには気づいていた。しかし、ジークが何に納得したのか、身構えるようなことが起きているのかはわからない。

「ジーク、いったい何が・・・!!」

 ジークに真意を問いただそうとした瞬間、セシルの感覚に引っかかるものが入って来た。
 即座に身構え、周囲に対する警戒を最大限強化する。

「そういうことだ、構えろ!」

 ジークの言葉とともに、カイにも、リシルにもわかるほどの異変が起きた。


   to be continued
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