FC2ブログ

黒ネコ琉璃の噺とゲームの小部屋

琉璃が思いつくままに小説を書いていく部屋です。テイストはラノベ、少女小説といったところでしょうか。眠れない夜のお供にでも。ときどき(?)ゲームと飼い猫の話もつぶやくと思います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

女神の巫女姫 no.11

 女神により作られた『アデラ』は、その世界の構成要素として大量のマナを含んでいる。
 マナは世界にめぐり、遍くモノにその恩恵を与えているが、その力の強さ故、時として生命の均衡を著しく乱してしまう。
 そうやって、均衡を崩されてしまった突然変異の生命が「魔物」と呼ばれる生き物として、この世界には存在している。その姿は異形をなし、精神は常に何かに飢え餓(かつ)えており、しばしば人を襲う。
 そんな「魔物」と呼ばれる生き物が今、セシルたちを取り囲んでいた。見えるだけでその数、十数体。気配だけならばもっとある。獣のような四足に、化け茸、百足に翅の生えた昆虫類、動く樹木と、森に生きるものすべての異形がそろっていた。

「あらまぁ、勢ぞろい」

 なんて、のんびりした口調で感想を述べながらも、リシルが油断なく構えているのは、「魔物」たちのその様子のおかしさにゆえ。

「みなさんずいぶんと、殺気だってますね」

 片手で持つには少し大ぶりな、けれど繊細な印象を持つ銃を抜き、いつでも照準を合わせられるよう目の高さに構える。『アデラ』では見たことのない形状の武器だが、今はそんなことに構っている暇は少女たちにはなかった。

「なんだって、こんな・・・」

 懐から取り出した扇をそれぞれの手に持ち、向き合った「魔物」を気迫で牽制しながら、セシルは視線を険しくする。
 「魔物」は普段から人を襲うことの多い生き物ではあるが、こんなにも食料もマナも豊かな場所で、ここまで殺気立つことは珍しい。その瞳には狂気が色濃く宿っており、何らかの異常事態が生じているに違いなかった。

「原因なんざどうでもいい。来るぞ!」

 ジークの一言の直後、獣が高く長く吠えたのを合図に、「魔物」達は一斉に襲いかかってくる。
 頭上からとびかかる昆虫を扇の横一閃でいなし、足元を這いよる茸をたたきつぶす。茸から舞い上がる毒胞子は、扇で起こした風に乗せて、さらにせまりくる獣に浴びせてやった。一連の動きは舞の型を踏んでいるかのように、一切の無駄がない。セシルが「魔物」たちから間合いをあけた絶妙な合間に、リシルの詠う声にのって吹き荒れたかまいたちが、襲い掛かる。マナをのせる唄は巫女姫の意思に沿い、どこまでも敵にまとわりつき、追いかける。それから逃れた「魔物」には、さらにセシルの扇が閃く。
 カイは近づくものを片端からうち落とし、牽制とともに掃射し、自らの間合いを防衛しながら確実に敵の数を減らしている。銃弾の描く銀色の軌跡は、無慈悲なまでの冷たさで生き物のぬくもりを奪っていった。
 ジークの手にした剣も一風変わったもので、その刀身は『アデラ』には存在しない光の帯のようで、「魔物」の血と体液を浴びてもその輝きが曇ることはない。振るわれる剣技は冴えわたっており、ほとんどの「魔物」が一刀のもとに地に伏す。自らに襲い掛かるものだけでなく、カイやリシルに近づくものまで片づけるほどの余裕と落ち着きを持った動きは、自身の力量を知る者のそれだった。
 けれど、「魔物」の数があまりにも多く、どれほど倒してもキリがない。次第に四人はじりじりと距離を離されていっていた。
 そんな中、一匹の翅をもった「魔物」が口から炎を吐き、セシルを襲う。舞い踊るように「魔物」を屠るセシルには、まだ動きに余裕がうかがえるのに、なぜか炎を避ける素振りを見せなかった。

「ジーク!!?」
「・・・っく!」

 セシルに間近に迫った炎は、ジークの左手で受け止められた。その行動は、冴えわたる剣技を持つ彼にとっても多少無理をしたものであったらしく、一瞬の“間”が出来た。その隙を逃さず、数匹の「魔物」が一斉にジークに迫る。

「・・・ちっ!」

 舌打ちをしつつも、明らかに自分をかばって負傷した男を放っておくほど、セシルは薄情でも恩知らずでもなかった。
 自分の対峙した茸を瞬時に片付け、ジークの左下からしゃがみこんだまま体を半回転させて回り込ませ、そのままの勢いで扇を払って大口を開けた狼型の獣を薙ぎ倒し、その回転の勢いを利用して立ち上がりざま下から上へ払いあげた扇で翅をもつ百足を切り裂く。
 その間に、ジークは右手から迫る人面樹が伸ばしたしなる枝を打ち払い、返す刀で飛び回る小型の怪鳥を切り捨て、半歩右に回って木を這う毒蜘蛛をその木に縫い留める。
 あたかも互いの背を守るような立ち位置に、セシルは戸惑いながらも、目の前の「魔物」達に意識を集める。
 散々叩いた結果、「魔物」は目視で数えられるほどに減っていた。「魔物」にも生存本能は存在するから、ここまで力の差が歴然としていることが分かったならば、普段ならとっくに逃げ出している。にもかかわらず、セシルたちの前の「魔物」は、いまだ戦意を失ってはいない。
 明らかな「魔物」の異常に、内心眉を顰めながらも、セシルとジークは自らが生き残るべく、動き出した。


   to be continued
スポンサーサイト

女神の巫女姫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<女神の巫女姫 no.12 | ホーム | 黒猫 4>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。