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黒ネコ琉璃の噺とゲームの小部屋

琉璃が思いつくままに小説を書いていく部屋です。テイストはラノベ、少女小説といったところでしょうか。眠れない夜のお供にでも。ときどき(?)ゲームと飼い猫の話もつぶやくと思います。

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女神の巫女姫 no.13

「・・・っごめん」
「大した傷ではない」

 セシルの謝罪を受け取り、向かいあったジークは左手でセシルの腕をとる。やっと止まった少女をここで逃がすわけにはいなかい。
 反射的に腕を振り払おうとして、またジークの左手であることに気づき動きを止める。

「とりあえず落ち着け。俺たちがはぐれる直前まで、カイがリシルの近くにいた。あちらも二人でいる可能性が高い。身内の欲目を差し引いても、あいつの腕は悪くない。そうそう簡単にやられはしないだろう」

 セシルが止まった隙に、ジークは一息にしゃべった。その一息の間に、反対の腕も拘束して完全に自分に向き合うように、少女の体の向きを変える。森はもう目前で、これ以上進ませるわけにはいかない。
 ジークに拘束されたことで、セシルはさらに冷静さを取り戻す。一つ大きく息をつき、リシルの身を案じる焦燥を吐き出して、取り乱した己を反省する。

「・・・・・・わかったから、離して」

 信用ならないとでもいうようにじっと見つめるジークに、正面から眼を合わせて言葉を重ねる。もう、大丈夫だと態度で示すために。
 セシルの視線を受け、ジークは慎重に手を離した。男の視線が警戒の色を含んでいないことから、セシルが落ち着きを取り戻したことを察してくれたようだ。

「手、見せなよ」

 ジークから視線を外して、ぼそっとセシルが呟く。
 唐突に言われた言葉の意味が分からず、ジークは数度瞬きを繰り返すが、そんなジークに焦れたのか、本人の了承も得ずにセシルがジークの左手を取った。

「・・・軽い火傷。これなら、後も残らないね。これは応急処置だから、後でリシルに『癒しの唄』でもしてもらって」

 男のグローブを外して傷を丹念に診た後、自分の道具入れから火傷用の軟膏を取りだし男の手のひらに薄くのばす。さらに包帯を取り出して、慣れた手つきで巻き付ける。
 一通りの治療が終わり、自分のもとに返ってきた左手を眺め、ジークは少し驚いた顔をする。

「・・・なに?」

 そんな男の反応に、少女はとがった声を出す。本格的に気分を害しているのではないが、視線も少しだけ険しい。

「いや、上手いなと。礼を言う」
「・・・・っ!」

 ジークの心なしか口の端を持ち上げた笑みのような表情に、セシルの鼓動が一瞬跳ねた。

「別に・・・それくらい普通だよ」

 それを悟られまいと顔をそむけるが、視線だけでひそかに男を観察する。先ほどの表情はすでに消え、周囲の地形や環境を把握するために視線を遠くに飛ばしている。
 弟と同じ銀の髪に青い瞳ではあるが、その趣はだいぶ異なっている。弟が春の柔ら重ならば、この男は凍てついた冬。少女の中では背の高いほうのセシルと比べても頭一つ分背が高く、筋骨隆々ではないが広い肩幅の鍛え抜かれた体躯は、力強さと俊敏さを秘めているが、粗野な荒々しさはない。他人を寄せ付けない雰囲気は、まるで野生の狼を思わせる。
 年頃の少女ならば、自分をかばってくれるいい男の微笑みを見てときめきを感じるのも当たり前。しかし、あまり普通とは言えない道を歩んできているだけに、人生経験は他の少女よりも豊富だが、心の機敏に関しては少々疎いセシルは、自分がこのとき何を感じたのか理解できなかった。
 そんなことよりも。

(あれ?あの傷って、そもそも・・・)

 そこまで考え、別の意味で鼓動が跳ねた。


   to be continued
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